産後のよくある質問
産後(産褥期)は、新米ママの身体と心が回復する重要な時期であり、新しい役割に適応する移行期でもあります。産後のよくある質問を理解することで、この特別な時期をより良く過ごすことができます。
産後の身体回復
子宮の回復
Q:悪露(おろ)はどれくらい続きますか? A:悪露は 3 つの段階を経て変化します:
- 赤色悪露:産後 3-4 日、血液が混じる
- 褐色・黄色悪露:産後 4-14 日、色が薄くなる
- 白色悪露:産後 14 日-6 週間、白っぽいまたは淡黄色
- 注意:量は徐々に減り、色は赤から白へ変化します。量が増えたり、悪臭があったり、大出血がある場合はすぐに受診してください。
Q:子宮はいつ元の大きさに戻りますか? A:子宮復古のタイムライン:
- 産後直後:おへその下あたり
- 産後 1 週間:恥骨結合とへその中間
- 産後 10 日:骨盤内に入る(触れなくなる)
- 産後 6 週間:妊娠前の大きさに戻る
Q:産後のお腹の痛み(後陣痛)は正常ですか? A:後陣痛は子宮が収縮して元に戻ろうとする痛みで、正常です:
- 授乳時に強まる:オキシトシンが子宮収縮を促すため
- 経産婦の方が強い:初産婦より痛みを強く感じることが多い
- 徐々に軽減:通常 2-3 日で治まる
- 異常な痛み:持続的な激痛は受診が必要
会陰と傷口の回復
Q:会陰切開や裂傷の傷はいつ治りますか? A:回復の目安:
- 軽度:1-2 週間で癒合
- 中等度:2-3 週間
- 重度:4-6 週間
- 完全回復:6-8 週間で違和感がなくなることが多い
Q:帝王切開の傷のケアは? A:ケアのポイント:
- 清潔・乾燥:傷口を清潔に保ち、濡れたら拭く
- 摩擦を避ける:傷に当たらない下着や服を選ぶ
- 保護:腹帯などで保護する
- 感染注意:赤み、腫れ、膿がある場合は受診
- 完全治癒:表面は 1 週間程度で閉じるが、深部の回復には数ヶ月かかる
Q:いつからお風呂に入れますか? A:入浴の目安:
- シャワー:経腟分娩は翌日から、帝王切開は術後 2-3 日から(医師の許可後)
- 浴槽入浴:1 ヶ月検診で悪露がなくなり、医師の許可が出てから
- 水温:38-40°C 程度が適温
- 時間:長湯は避ける
月経の再開
Q:産後の生理はいつ再開しますか? A:個人差が大きいです:
- ミルク育児:産後 6-8 週間〜3 ヶ月頃
- 完全母乳:産後 4-6 ヶ月以降、断乳後になることも
- 混合育児:産後 3-4 ヶ月頃
- 個人差:もっと早い人も遅い人もいます
Q:再開後の生理に変化はありますか? A:変化の特徴:
- 量が多い:最初の数回は量が多いことがある
- 不規則:周期が整うまで数ヶ月かかることがある
- 生理痛:軽くなる人もいれば、変わらない人もいる
Q:生理が来ていなければ妊娠しませんか? A:いいえ、妊娠する可能性があります:
- 排卵が先:生理が来る前に排卵が起こることがある
- 授乳性無月経:避妊効果はあるが 100%ではない
- 避妊:産後最初の性生活から避妊が必要
母乳育児
授乳のコツ
Q:いつから母乳が出始めますか? A:分泌の変化:
- 初乳:産後すぐから少量分泌される(黄色く濃厚)
- 移行乳:産後 3-5 日頃から量が増える
- 成乳:産後 2 週間頃から(白くサラサラ)
- 軌道に乗る:産後 1-2 ヶ月かかることも
Q:赤ちゃんが足りているかどうかの判断は? A:足りているサイン:
- おしっこ:1 日 6 回以上、色が薄い
- うんち:1 日複数回(月齢による)
- 体重増加:1 日 25-30g 増えている(退院後)
- 様子:授乳後満足して眠る、機嫌が良い
- 授乳時間:片側 10-20 分程度
Q:正しい授乳姿勢は? A:ポイント:
- 密着:お腹とお腹を合わせる
- 深含み:乳輪まで深くくわえさせる
- リラックス:ママも赤ちゃんも楽な姿勢
- バリエーション:横抱き、縦抱き、フットボール抱き、添い乳
よくあるトラブル
Q:乳首が切れて痛い(乳頭亀裂)時は? A:対策:
- 正しい含ませ方:浅飲みを直す
- 保湿:授乳後、母乳を塗るか、ラノリン(羊毛脂)クリームを塗る
- 乾燥:空気にさらして乾かす
- 保護:乳頭保護器(ニップルシールド)を使う
- 休ませる:痛みが激しい時は搾乳して与える
Q:おっぱいが張って痛い(乳房緊満)時は? A:対策:
- 頻回授乳:赤ちゃんにたくさん吸ってもらう
- 温める:授乳前に温めて血流を良くする
- 冷やす:授乳後に冷やして炎症を抑える
- 少し搾る:張りすぎて飲みにくい時は、少し搾ってから含ませる
- マッサージ:優しくマッサージする(やりすぎ注意)
Q:母乳不足を感じたら? A:母乳量を増やすには:
- 頻回授乳:回数を増やすのが一番効果的
- しっかり飲ませる:片方を空にするまで飲ませる
- 夜間授乳:夜間はプロラクチン(母乳を作るホルモン)が多い
- 水分・食事:水分をしっかり摂り、バランス良く食べる
- 休息:ストレスを溜めず、休める時に休む
Q:哺乳瓶を嫌がる時は? A:対策:
- タイミング:空腹すぎず、機嫌の良い時に
- 人を変える:ママ以外があげる
- 乳首を変える:形や素材を変えてみる
- 温度:人肌(約 37-40°C)にする
- 根気よく:少しずつ慣らす
新生児ケア
日常のお世話
Q:沐浴(お風呂)の注意点は? A:ポイント:
- 温度:お湯は 38-40°C、室温は 24-26°C
- 時間:5-10 分程度、手早く
- 頻度:1 日 1 回(夏場や汗をかいた時は適宜)
- 洗剤:ベビー用石鹸を使用
- ケア:おへそや耳のケアも忘れずに
Q:おへそのケアはどうしますか? A:臍帯ケア:
- 乾燥:お風呂上がりは水分を拭き取る
- 消毒:必要に応じて消毒用アルコールで消毒(病院の指示に従う)
- 観察:赤み、ジクジク、臭いがないか
- 脱落:生後 1-2 週間で自然に取れる
- 異常:出血が続く、肉芽が出る場合は受診
Q:着せる服の枚数は? A:目安:
- 大人+1 枚:大人が着ている枚数より 1 枚多くが基本
- 確認:背中や首の後ろを触って、温かければ OK(汗ばんでいたら着すぎ)
- 素材:綿 100%など通気性の良いもの
- 室温:エアコンで調整し、着せすぎない
睡眠と安全
Q:新生児の睡眠時間は? A:特徴:
- 合計:1 日 16-20 時間
- サイクル:1-3 時間おきに起きて寝るを繰り返す
- 昼夜逆転:最初は昼夜の区別がない
- 環境:静かで暗い環境を作る必要はない(昼は明るく、夜は暗く)
Q:SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防は? A:予防策:
- 仰向け寝:うつ伏せ寝は避ける
- 固めの寝具:ふかふかの布団や枕は避ける
- 顔周り:ぬいぐるみやタオルを置かない
- 禁煙:周囲の喫煙をやめる
- 母乳育児:リスクを下げる効果がある
- 温めすぎない:厚着や暖めすぎに注意
健康観察
Q:新生児黄疸は大丈夫ですか? A:黄疸について:
- 生理的黄疸:生後 2-3 日で現れ、1-2 週間で消える(正常)
- 母乳性黄疸:母乳の場合、長引くことがある
- 病的黄疸:生後 24 時間以内に現れる、強すぎる、長引く場合は治療が必要
- 観察:白目が黄色い、肌が黄色い。元気がなくおっぱいを飲まない場合は受診
Q:吐き戻しが多いのですが? A:対策:
- 原因:胃が真っ直ぐで逆流しやすい
- ゲップ:授乳後は必ずゲップをさせる
- 縦抱き:授乳後 15-20 分は縦抱きにする
- 少量頻回:一度に飲ませすぎない
- 受診:噴水のように吐く、体重が増えない場合は受診
産後のメンタルヘルス
産後うつ
Q:マタニティブルーと産後うつの違いは? A:違い:
マタニティブルー:
- 時期:産後 3-5 日頃ピーク、2 週間以内に治まる
- 症状:涙もろい、情緒不安定、不安
- 頻度:多くの人が経験する(30-50%)
- 対処:自然に治る、家族のサポート
産後うつ:
- 時期:産後数週間〜数ヶ月で発症
- 症状:激しい落ち込み、興味喪失、不眠、自責感、赤ちゃんへの無関心
- 頻度:10-15%
- 対処:専門家の治療が必要
Q:産後うつの予防は? A:予防策:
- 睡眠確保:赤ちゃんが寝たら一緒に寝る
- 完璧を求めない:家事は手抜きで OK
- 頼る:夫や実家、サービスに頼る
- 話す:辛い気持ちを誰かに話す
- 休息:自分の時間を作る
Q:治療は必要ですか? A:日常生活に支障が出る場合は必要です:
- カウンセリング:心理療法
- 薬物療法:授乳中でも使える薬がある
- サポート:保健師や助産師への相談
- 早期発見:早めの対処が回復を早める
パートナーシップ
Q:夫婦関係を良好に保つには? A:アドバイス:
- 会話:感謝の言葉を伝え合う、気持ちを共有する
- 協力:育児・家事を分担する(「手伝う」ではなく「一緒にする」)
- 理解:お互いの疲れや変化を理解する
- 二人の時間:短時間でも二人で話す時間を作る
Q:産後の性生活はいつから? A:再開の目安:
- 時期:1 ヶ月検診で許可が出てから(悪露が終わり、傷が治ってから)
- 心身の準備:ママの体調と気持ちが整ってから
- 潤滑:ホルモンの影響で濡れにくいことがあるため、潤滑ゼリーなどを活用
- 避妊:再開初回から避妊が必要
産後の生活
食事と栄養
Q:産後の食事制限はありますか? A:基本的にはありませんが:
- アルコール:授乳中は控える(飲むなら授乳直後、時間を空ける)
- カフェイン:適量(1 日 2-3 杯)なら OK
- 薬:授乳中は医師に確認
- バランス:和食中心のバランス良い食事を心がける
Q:授乳中に必要な栄養は? A:意識して摂りたいもの:
- 鉄分:貧血予防
- カルシウム:骨の健康
- タンパク質:身体の回復
- 水分:母乳の主成分
- 葉酸:産後も推奨される
運動と体型戻し
Q:いつから運動できますか? A:段階的に:
- 産後すぐ:産褥体操(足首の運動など)
- 産後 1 ヶ月:軽いウォーキング、ストレッチ
- 産後 2-3 ヶ月:徐々に強度を上げる
- 本格的な運動:産後 3 ヶ月以降、体調を見ながら
Q:体型はどうやって戻しますか? A:ポイント:
- 骨盤ケア:骨盤ベルトや骨盤底筋体操
- 母乳育児:カロリー消費になる
- 食事:極端なダイエットは避け、質を重視
- 姿勢:正しい姿勢を意識する
- 焦らない:妊娠期間と同じくらいかけて戻すつもりで
ヒント:産後の回復には個人差があります。無理をせず、自分のペースで進めてください。不安なことは一人で抱え込まず、専門家や家族に相談しましょう。