新生児ケアの基礎
新生児期とは、生まれてから生後 28 日までの期間を指します。この時期の赤ちゃんは特別なケアが必要です。新生児ケアの基本知識を身につけることで、新米パパ・ママも自信を持って赤ちゃんのお世話ができるようになります。
新生児の特徴
外見的特徴
- 体重:2500-4000g、平均約 3000g
- 身長:45-55cm、平均約 50cm
- 頭囲:32-36cm
- 胸囲:頭囲よりやや小さく、樽状の胸をしています
- 皮膚:赤みがあり、胎脂や胎児性母斑(蒙古斑など)が見られることがあります
生理的特徴
- 呼吸:40-60 回/分、リズムが不規則なことがあります
- 心拍:120-160 回/分
- 体温:36.5-37.5℃、環境温度の影響を受けやすいです
- 睡眠:1 日 16-20 時間、3-4 時間おきに目を覚まします
- 食事:2-3 時間おきに授乳が必要です
日常のケア
清潔ケア
沐浴(お風呂)
- 頻度:毎日 1 回(夏場や汗をかいた時は適宜)
- 温度:38-40℃ 程度(季節による)、肘の内側で温度を確認します
- 順序:顔 → 頭 → 体(首、脇、手、お腹、背中、足)→ 陰部
- 時間:5-10 分程度、湯冷めしないように手早く
- 注意:おへそは乾燥させ、沐浴後はすぐに水分を拭き取ります
沐浴の手順
- 準備:お湯、タオル、着替え、オムツ、ベビーソープなどを準備し、室温を調整します(24-26℃)。
- 洗顔:ガーゼをお湯に浸し、優しく顔を拭きます(石鹸は使いません)。
- 洗髪:頭を支えながら、石鹸を泡立てて優しく洗います。
- 洗体:首のしわ、脇の下、手のひらなど、汚れがたまりやすい場所を丁寧に洗います。
- 上がり湯:きれいなお湯(かけ湯)をして、タオルで包んで水分を拭き取ります。
- 保湿・着替え:保湿剤を塗り、素早く服を着せます。
顔のケア
- 目:目やにがあれば、濡らしたガーゼで目頭から目尻に向かって優しく拭きます。
- 鼻:鼻の入り口の汚れは綿棒で取りますが、奥まで入れないようにします。
- 口:通常はケア不要ですが、ミルクかすが気になる場合は濡らしたガーゼで拭います。
- 耳:耳の入り口や裏側を拭きます。耳の穴の中は触りません。
お尻のケア
- オムツ交換:汚れたらすぐに交換します(新生児は 1 日 10 回以上)。
- 拭き方:おしりふきや温水で、前から後ろに向かって拭きます(特に女の子)。
- 乾燥:拭いた後は少し乾かしてから新しいオムツをつけます。
- おむつかぶれ予防:清潔と乾燥を保ち、必要ならワセリンなどを塗ります。
おへそのケア
臍帯(へその緒)の脱落
- 時期:生後 1-2 週間で自然に取れます。
- 乾燥:乾燥させることが最も重要です。
- 消毒:必要に応じて消毒用アルコールで消毒します(産院の指示に従ってください)。
ケア方法
- 観察:赤み、腫れ、出血、悪臭がないか確認します。
- 清潔:沐浴後は水分をしっかり拭き取ります。
- 衣類:オムツがおへそに当たらないように折り返します。
- 受診:出血が続く、ジクジクする、肉芽(ポリープ状のもの)がある場合は受診してください。
###爪のケア
爪切りのタイミング
- 時期:伸びてきたら切ります(新生児の爪は伸びるのが早いです)。
- タイミング:寝ている時が切りやすいです。
- 道具:新生児用爪切りハサミを使います。
- 方法:指の腹を押し下げて、深爪しないように少しずつ切ります。角を丸く整えます。
授乳と栄養
母乳育児
メリット
- 栄養:赤ちゃんに最適な栄養バランス
- 免疫:病気から守る免疫物質が含まれています
- 消化:消化吸収が良い
- 愛着:スキンシップで母子の絆が深まります
- 母体回復:子宮収縮を促します
頻度と方法
- 自律授乳:赤ちゃんが欲しがる時に欲しがるだけあげます(頻回授乳)。
- 間隔:最初は 1-3 時間おき、1 日 8-12 回以上になることもあります。
- 夜間:夜間も授乳が必要です(プロラクチンの分泌が多い)。
授乳姿勢
- 横抱き:一般的な抱き方
- 交差横抱き:首を支えやすい
- フットボール抱き(脇抱き):帝王切開の方や乳房が大きい方に
- 添い乳:夜間や休息時に
含ませ方(ラッチオン)
- 大きく開口:赤ちゃんの口が大きく開くのを待ちます。
- 深く:乳首だけでなく、乳輪まで深く含ませます。
- 密着:赤ちゃんのお腹とママのお腹を密着させます。
足りているサイン
- おしっこ:1 日 6 回以上、色が薄い
- うんち:1 日複数回
- 体重:退院後、1 日 25-30g 程度増えている
- 様子:授乳後満足して眠る、機嫌が良い
ミルク育児(人工栄養・混合栄養)
ミルクの選び方
- 育児用ミルク:新生児用の粉ミルクや液体ミルクを選びます。
- アレルギー:家族にアレルギーがある場合は医師に相談してください。
調乳と授乳
- 清潔:手洗いし、消毒した哺乳瓶を使います。
- 温度:70℃ 以上のお湯で溶かし、人肌(40℃ 程度)に冷ましてから与えます。
- 量:ミルク缶の表示や産院の指示を目安に、赤ちゃんの様子を見て調整します。
- 姿勢:上体を起こして抱っこし、空気を飲み込まないように乳首をミルクで満たします。
注意点
- 飲み残し:飲み残したミルクは捨てます。
- 排気(ゲップ):授乳後は必ず背中をトントンしてゲップをさせます。
睡眠ケア
睡眠環境
安全な環境
- 寝具:固めの敷布団やマットレスを使います(ふかふかは窒息の危険)。
- 枕:新生児に枕は不要です(タオルを敷く程度で OK)。
- 周囲:顔の周りにぬいぐるみ、タオル、紐などを置かないようにします。
- 室温:適温(20-25℃)を保ちます。
SIDS(乳幼児突然死症候群)対策
- 仰向け寝:必ず仰向けで寝かせます(うつ伏せ寝は避ける)。
- 禁煙:周囲の人は喫煙しないでください。
- 温めすぎない:厚着や掛けすぎに注意します。
- 母乳育児:SIDS のリスクを下げると言われています。
睡眠の特徴
- 昼夜逆転:最初は昼夜の区別がありません。
- サイクル:短いサイクルで寝起きを繰り返します。
- リズム作り:朝はカーテンを開けて光を浴びせ、夜は暗く静かにして、徐々にリズムを作ります。
健康観察と安全
バイタルサイン
体温
- 平熱:36.5-37.5℃
- 測定:毎日決まった時間に測ると平熱がわかります。
- 発熱:38℃ 以上は受診が必要です(生後 3 ヶ月未満の発熱は要注意)。
呼吸
- 観察:苦しそうではないか、胸の動きを見ます。
- 異常:小鼻をピクピクさせる、陥没呼吸、顔色が悪い場合はすぐに受診してください。
体重
- 生理的体重減少:生後数日は一時的に体重が減ります(出生体重の 10%以内)。
- 増加:生後 7-10 日頃に出生体重に戻り、その後は 1 日 30g 前後増えます。
受診の目安
- 発熱:38℃ 以上の熱
- 哺乳力低下:おっぱい・ミルクを飲まない
- 元気がない:ぐったりしている、泣き声が弱い
- 顔色が悪い:青白い、土気色
- 嘔吐:噴水のように吐く、吐瀉物に色(緑や赤)がついている
- 黄疸:白目や皮膚の黄色味が強い、便が白っぽい
安全対策
抱っこ
- 首すわり前:必ず首と頭を支えます。
- 移動:足元に注意し、慎重に歩きます。
事故防止
- 転落:ソファや大人用ベッドに一人で寝かせないでください。
- 窒息:顔の周りに物を置かない、スタイ(よだれかけ)は寝る時は外します。
- 火傷:熱い飲み物を飲みながら抱っこしない、沐浴のお湯の温度を確認する。
- 誤飲:小さな物を近くに置かない。
スキンシップと発達
コミュニケーション
- 抱っこ:泣いたら抱っこして安心させます(抱き癖は気にしなくて大丈夫です)。
- 声かけ:優しく話しかけたり、歌ったりします。
- アイコンタクト:赤ちゃんの目を見て接します。
- スキンシップ:ベビーマッサージやタッチケアも有効です。
発達への刺激
- 視覚:追視(動くものを目で追う)の練習(メリーなど)。
- 聴覚:ガラガラなどの音を聞かせる。
- 触覚:色々な素材に触れさせる。
- タミータイム(うつ伏せ遊び):覚醒時に大人の監視下でうつ伏せにして、首の筋肉の発達を促します(寝かせないように注意)。
ヒント:新生児のお世話は 24 時間体制で大変ですが、あっという間に過ぎ去る貴重な時間でもあります。完璧を目指さず、赤ちゃんと一緒に少しずつ成長していきましょう。困ったときは一人で抱え込まず、家族や専門家(助産師、保健師、医師)に相談してください。